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Minejesa Capital B.V. issuer summary: 公開情報ベースの信用サマリーと調査可能性

Issuer: Minejesa Capital | Document: Issuer Summary | Date: 2026-05-07

作成日: 2026-05-07
発行体: Minejesa Capital B.V.
実質的な信用対象: PT Paiton Energy 保証付きプロジェクト債
対象債券: 4.625% Guaranteed Secured Senior Notes due 2030 / 5.625% Guaranteed Secured Senior Notes due 2037

1. 結論

Minejesa Capital B.V. は、PT Paiton Energy向けの資金調達SPVであり、実質的にはPaiton Energyのプロジェクトボンドとして分析すべき発行体である。公開情報からは、PLN向け長期PPA、2,045MWの大型石炭火力、償還型債務、担保・口座ウォーターフォール、低位投資適格格付という信用の骨格を確認できる。一方、最新財務、DSCR計算、リザーブ残高、現在残高、市場価格は公開情報だけでは不足しており、投資判断にはnoteholder資料と市場データの取得が必要である。

SGXに上場されている2030年債と2037年債は、Paiton Energy による保証と担保が付いたプロジェクト・ファイナンス型の債券であり、信用分析の中心は Minejesa Capital 単体ではなく、Paiton Energy の発電所キャッシュフロー、PLNとの長期PPA、担保・口座管理・DSCR・償還スケジュールである。SGXに掲載されている2017年8月3日付 Offering Memorandum は約394ページあり、発行条件、PPA、担保、口座ウォーターフォール、リスク要因、当時の財務・運転実績を確認できる。さらに、Fitchの2025年11月3日付格付確認リリースが公開再掲されており、2025年時点の運転状況、DSCR、格付感応度を一定程度確認できる。Mitsui、RATCH、Nebras、Milbankなどの公開資料からは、発行後の株主構成変化も追跡できる。

ただし、公開情報だけではフルの投資判断には限界がある。特に、直近の制限グループ財務諸表、compliance certificate、DSCR計算明細、DSRAやmajor maintenance reserveの残高、2030年債・2037年債の現在残高、価格・スプレッド、2024年以降の株主変更に関するレンダー同意やコベナンツ上の扱いは、公開ソースだけでは十分に確認できない。

公開情報ベースの暫定的な見方としては、Minejesa債は「PLN向け長期PPAを持つ、低位投資適格のインドネシア石炭火力IPPプロジェクト債」と位置づけられる。契約キャッシュフローと償還型の債務構造は強みだが、PLN集中、発電所の稼働率・熱効率、石炭品質、インドネシア法上の担保執行、株主構成の変化、石炭火力に対する長期的な環境・移行リスクが主な制約である。

2. 債券の概要

2017年のSGX Offering Memorandumでは、Minejesa Capital B.V. が2本の米ドル建て保証付き担保付シニア債を発行している。

債券 当初発行額 クーポン 最終償還 元本償還
2030年債 US$1.2bn 4.625% 2030年8月10日 2024年2月10日から半年ごとに分割償還
2037年債 OC上はUS$800mn。一方、後続の一部公開情報ではUS$900mnとの記載もあり、発行履歴・現在残高は要確認 5.625% 2037年8月10日 2032年2月10日から半年ごとに分割償還

2030年債は2024年2月から元本償還が始まっている。OC上のスケジュールでは、2030年8月まで半年ごとにおおむね当初元本の7.02%を償還し、2027年8月のみ8.74%の償還となる。2037年債は2032年2月から2037年8月まで分割償還される。したがって、2030年債はすでにデレバレッジ局面に入った短めのプロジェクト債、2037年債はPPAの長期キャッシュフローにより長く乗る債券として見る必要がある。

2037年債については、2017年OC上の発行額はUS$800mnと記載されている。一方、後続の一部公開情報ではUS$900mnとの記載も見られるため、追加発行、tap issue、情報源間の差異、または残高表示の違いの可能性がある。現時点では断定せず、Bloomberg、SGX開示、Trustee資料で発行履歴と現在残高を確認する必要がある。

債券の発行体は Minejesa Capital だが、実質的な返済原資は Paiton Energy である。OCによれば、発行代わり金は Minejesa Capital から Minejesa Power B.V. へ、さらに Paiton へインターカンパニー・ローンとして流れる。Minejesa Capital 自体は実質的な事業会社ではなく、Paitonのキャッシュフローを債券投資家に届ける資金調達ビークルである。

3. プロジェクトの内容

PT Paiton Energy は、インドネシア東ジャワ州の Paiton Power Complex に石炭火力発電所を保有・運営している。2017年OCでは、Paitonは当時インドネシア第2位の独立系発電事業者とされ、合計2,045MWのネット設備容量を有していた。

発電所 容量 稼働開始 / 特徴 信用上の意味
Paiton 7/8 1,230MW、615MW x 2基 1999年商業運転開始 長い運転実績があるが、経年設備として稼働率・大型保守を監視
Paiton 3 815MW 2012年商業運転開始、超臨界圧ユニット 比較的新しいが単一大型ユニットとして停止時の影響が大きい

発電した電力は、インドネシア国営電力会社 PLN に販売される。OCによれば、Paiton 7/8およびPaiton 3はいずれも2042年までの長期PPAを持つ。PPAは take-or-pay 型であり、発電所が契約上の availability を満たす限り、容量支払が債務返済、固定O&M、税金、一定の株主リターンを支える構造になっている。変動O&Mや石炭コストは、エネルギー支払を通じて一定程度パススルーされる。

これはマーチャント電力事業者とは大きく異なる。電力価格やスポット需要に直接さらされるのではなく、長期契約に基づく可用性支払に依存する。したがって、信用リスクの中心は電力市場価格ではなく、PLNの支払能力、PPAの履行、発電所のavailability、熱効率、石炭供給、口座ウォーターフォールの遵守、担保執行可能性である。

PaitonはインドネシアのJava-Bali系統にとって重要な電源であり、OCでは Vital National Object として政府から一定の保安支援を受けることも記載されている。ただし、これは債券のソブリン保証ではない。重要インフラであることは信用補完的だが、PLNやインドネシア政府が債券元利払いを直接保証しているわけではない。

4. 信用を支える要素

第一に、PPAによるキャッシュフローの見通しが比較的強い。2042年までの長期PPAがあり、2030年債・2037年債の最終償還を超える契約期間が存在する。発電所がavailability要件を満たせば、容量支払が固定費と債務返済を支える構造である。

第二に、オフテイカーであるPLNはインドネシアの国営電力会社であり、政策上の重要性が高い。OCではPLNに対する政府支援の枠組みや、Paiton 7/8 PPAに関する財務省サポートレターが説明されている。ただし、サポートレターは政府保証ではないため、PLNリスクを完全にソブリンリスクへ置き換えてはいけない。

第三に、発電所には長い運転実績がある。Paiton 7/8は1999年、Paiton 3は2012年に商業運転を開始しており、発行時点でも一定の稼働実績があった。Fitchの2025年11月の公開再掲リリースでも、2025年1-7月のavailabilityがPPA上の平均想定を上回ったとされている。

第四に、債券が償還型である。プロジェクト債として、元本が時間とともに返済されることは大きい。2030年債は既に償還が始まっており、リファイナンスリスクは通常のbullet債より低い。2037年債も2032年以降に分割償還される。

第五に、口座ウォーターフォールとリザーブが存在する。OCでは、収入口座、運転費口座、債務返済準備口座、major maintenance reserve、distribution accountなどが説明されている。プロジェクト収入は、運転費、石炭費、税金、保守準備、債務返済、リザーブ充当を経て、最後に株主分配へ流れる設計である。これは債券投資家にとって重要な構造的保護である。

第六に、格付けは公表ベースで低位投資適格に維持されている。Fitchは2025年11月3日に BBB- / Stable を確認した。Moody'sについては Baa3 / Stable との二次情報があるが、今回の公開情報調査では一次資料または全文を確認できていないため、信用評価上は補助情報にとどめる。

4.5 PLN信用力の簡易整理

本件の最大の外部信用リスクはPLNである。PaitonのPPAは長期・take-or-pay型であり、発電所のavailabilityを満たす限り容量支払が債務返済を支えるが、その支払主体はPLNである。したがって、Paitonの設備稼働や担保構造だけでなく、PLNの信用力、インドネシア政府の支援姿勢、電力料金政策、補助金・燃料費補填の仕組みがMinejesa債の信用力に波及する。

PLNはインドネシア国営電力会社であり、Java-Bali系統を含む国内電力供給の中核を担うため政策的重要性は高い。一方で、PaitonのPPAや財務省サポートレターは、Minejesa債またはPLN支払義務に対する明示的なソブリン保証そのものではない。PLNの格付低下、政府支援の弱まり、補助金支払いの遅れ、料金政策の歪みは、PaitonのPPAキャッシュフロー評価とMinejesa債の格付・スプレッドに下方圧力をかけ得る。

また、OCが説明する通り、アジア通貨危機後にはPLNによるIPP支払い停止・減額やPaiton 7/8 PPA再交渉の履歴がある。これは、PPAが強い契約保護を提供する一方で、マクロ・ソブリン・電力セクター危機時には契約の絶対性に限界があることを示す。PLNについては別途作成済みのサマリーで財務・政府支援・格付を確認し、本レポートではMinejesa債への連動性を中心に見る。

5. 主要リスク

5.1 PLN集中リスク

Paitonの売電先はPLNであり、オフテイカー集中が最大の信用リスクである。PLNは国営であり政策的に重要だが、OCはインドネシア政府がPLNの債務を直接保証しているわけではないことを明示している。

また、PPAの履行リスクは過去にも顕在化している。OCでは、アジア通貨危機後にPLNがIPPへの支払いを停止・減額し、Paiton 7/8のPPAが再交渉された経緯が説明されている。これは、非常時には契約が絶対ではないことを示す重要な履歴である。

Fitchは、PLNの信用力とPPAの強さを踏まえて revenue risk を評価しているが、PLN格下げやPLN支援環境の悪化はMinejesa債の直接的な下方リスクになり得る。

5.2 稼働率・熱効率・設備故障リスク

PPAは、発電所がavailabilityや運転性能を満たすことを前提にキャッシュフローを支える。したがって、forced outage、大型設備故障、熱効率の悪化、石炭品質問題、保守計画の失敗は信用上重要である。

OCには、2013年のUnit 7変圧器トラブルにより128日間の予定外停止が発生し、PLNからの支払いが減少したことが記載されている。保険で一部補填されたが、免責期間や回収ラグがあるため、停止リスクは完全には消えない。SGX開示でも2018年に変圧器関連の事象が確認される。

Fitchの2025年更新では、2025年1-7月のavailabilityは改善している一方で、Paiton 7/8のheat rateはPPA契約水準を上回っていたとされる。主因はforced outageや修繕後のfine-tuningとされており、運転リスクは管理可能だが継続監視が必要である。

5.3 石炭供給・燃料品質リスク

Paitonは石炭火力であり、仕様に合った石炭を安定的に確保する必要がある。OCでは、Paiton 7/8およびPaiton 3が一定の熱量レンジの亜瀝青炭を使用すること、海上輸送や季節要因、石炭品質、サプライヤー履行が運転に影響し得ることが説明されている。

燃料コストのパススルーは大きな強みである。しかし、パススルーは価格リスクを軽減するものであり、石炭が供給されない、品質が合わない、熱効率ペナルティが出る、船積み・輸送が遅れるといったリスクまでは完全に消せない。Fitchの2025年更新では、Paiton 7/8で石炭仕様のばらつきに起因する運転問題に対応するため、coal switch programme が進められているとされる。

5.4 担保・法的執行リスク

債券はsecuredとされるが、担保パッケージは万能ではない。OCによれば、担保には一定のプロジェクト資産、O&M契約上の権利、口座、発行体株式、インターカンパニー・ローン債権などが含まれる。一方で、第三者同意が必要な契約や債権は担保から除外される場合がある。PLN債権やO&M以外の主要プロジェクト契約は、同意が得られない限り担保に含まれない旨が記載されている。

さらに、インドネシア法上、委任状やpower of attorneyが破産手続で担保権と同じ効力を持つとは限らない。OCも、担保執行の不確実性、担保価値の不足、担保資産の流動性不足をリスクとして挙げている。

したがって、回収分析では「発電所の資産価値があるから安全」と単純には言えない。債券投資家にとって最も重要なのは、清算価値ではなく、発電所が稼働を続け、PPAキャッシュフローが口座ウォーターフォールを通じて債務返済へ流れることである。

5.5 通貨・インデクセーションリスク

債券は米ドル建てであり、Paitonの機能通貨・表示通貨も米ドルである。一方で、PPAの支払要素や費用にはルピアや円に連動する部分がある。発行時には円建てシニア債務も存在した。Fitchの2025年更新でも、Paiton 3のcapacity paymentの一部が2029年まで円に連動しており、2030年債に一定のミスマッチを生じさせるとされている。

Fitchはこのリスクを限定的とみているが、2030年債と2037年債の比較では重要である。2030年債は残存期間が短く、償還が進む一方で、2029年までの円連動ミスマッチの影響を受けやすい。2037年債は元本償還開始が2032年であるため、円連動ミスマッチは主に利息部分にとどまりやすい。

5.6 株主構成・スポンサー変更リスク

発行時の株主構成は、その後大きく変化している。Mitsuiは2024年4月にPT Paiton Energy、Minejesa Capital B.V.、IPM Asiaの持分売却を完了した。RATCHは2024年にPaiton投資を完了し、2026年2月にはPT Paiton EnergyおよびMinejesa Capital B.V.の5%持分をPT Medco Daya Energi Sentosaへ売却すると発表している。公開情報上、Medco関連グループの重要性は高まっている。

この論点で重要なのは、単に「新株主が強いか弱いか」ではない。確認すべき点は、株式譲渡にレンダーや債券保有者の同意が必要だったか、change of control条項や格付トリガーに抵触しなかったか、O&Mやスポンサーサポート体制に変化がないか、国際スポンサー色の低下とローカルスポンサー色の強化をどう評価するかである。

Fitchは2024年のMitsui退出を踏まえても2025年にStableを維持している。ただし、2026年2月のRATCH持分縮小は、今回確認できたFitch更新より後の事象であり、今後の格付コメントや同意文書の確認が必要である。

5.7 石炭火力・ESG・移行リスク

Paitonは石炭火力プロジェクトであり、2042年までPPAがある。契約キャッシュフローにより、短中期の市場価格リスクは低いが、長期的な石炭火力に対する規制、保険、銀行ファイナンス、投資家需要、環境コスト、カーボン政策の影響は残る。

2030年債では、償還までの期間が短く、既に元本償還が始まっているため、移行リスクは相対的に限定的である。2037年債では、より長く石炭火力・PLN・インドネシア政策リスクを負うため、同じ発行体でもリスクプレミアムはより大きく要求されるべきである。

5.8 情報開示リスク

Minejesa Capitalは上場事業会社ではない。SGX上場によりOCや一部イベント開示は取得できるが、定期的な財務諸表やnoteholder reportが公開で十分に確認できるわけではない。公開情報だけの分析では、現在のDSCR、DSRA残高、制限分配テスト、現在残高を完全に検証できない。この情報格差自体が投資リスクである。

6. 債券構造と投資家保護

6.1 保証と返済原資

OCによれば、Paitonは債券の元本、プレミアム、利息その他支払額について保証を提供している。Minejesa Capitalの主な資産は Minejesa Power への持分とインターカンパニー・ローン関連権利であり、Minejesa Powerの主な資産もPaiton向けローンである。したがって、保証とPaitonのキャッシュフローが債券信用の中核である。

6.2 担保

担保には、一定のプロジェクト資産、口座、発行体株式、インターカンパニー・ローン債権などが含まれる。ただし、PLN債権や主要プロジェクト契約の一部は、必要な第三者同意がない限り担保に含まれない。担保は重要だが、担保権だけで投資元本の回収が確実になるタイプではない。

6.3 口座ウォーターフォール

OCでは、Paitonの収入が以下のような優先順位で配分される構造が説明されている。

  1. 運転費、石炭費、税金等
  2. major maintenance reserve
  3. secured parties関連費用
  4. シニア債務サービス
  5. debt service reserve account
  6. mandatory / optional redemption やprepayment
  7. operator bonus
  8. distribution accountを通じた株主分配

この構造は債券投資家にとって重要な保護である。ただし、実際に保護が効いているかを判断するには、現在の口座残高、DSRA充足状況、保守準備金、分配実績、waiverやamendmentの有無を確認する必要がある。公開情報だけではここが十分に見えない。

7. 公開情報から取得できるもの

最も重要な一次情報は、SGX掲載の2017年OCである。ここから取得できるものは以下の通り。

Fitchの2025年11月公開再掲リリースからは、現在に近い信用情報が取れる。具体的には、BBB- / Stableの確認、PPA評価、運転リスク、石炭供給、DSCR、2025年1-7月のavailability、heat rate、1H25 DSCR、格付上方・下方感応度などである。これはOCの2017年情報を補完するうえで非常に有用である。

Mitsui、RATCH、Milbank、Asian Powerなどからは株主構成変化が追える。特にMitsuiの2024年退出、RATCHの2024年取得と2026年一部売却、Medco関連グループの持分拡大は、スポンサー分析上重要である。

SGX開示からは、OCのほか、2018年の設備トラブル関連開示、2024年2月の2030年債元本償還通知などが確認できる。ただし、SGX検索のインデックスはやや不安定であり、全ての定期報告や償還通知が容易に拾えるとは限らない。

8. 公開情報だけでは確認しにくいもの

第一に、直近の財務諸表である。OCには2016年および2017年5月までの財務があるが、現在の信用判断には古い。現在の売上、EBITDA、キャッシュ、税金、保守費、債務残高、配当、リザーブ残高は、公開情報だけでは十分に確認できない。

第二に、現在のDSCRを自分で再計算できない。FitchはDSCRを示しているが、詳細な計算明細や代替シナリオを検証するには、restricted group財務、債務返済表、口座残高が必要である。

第三に、DSRAとmajor maintenance reserveの残高が分からない。OCで制度は確認できるが、現時点で実際にどれだけ積まれているかはnoteholder reportやcompliance certificateが必要である。

第四に、現在のamount outstandingが完全には確認できない。2024年2月の2030年債償還通知は確認できるが、その後の全ての償還支払いを公開情報だけで完全に照合できていない。償還型債券では、現在残高が利回り、WAL、スプレッド、損失率分析に直結する。

第五に、株主変更に伴う同意・waiver履歴が不明である。Mitsui退出やRATCHの持分縮小が、どの条項に基づき処理されたのか、レンダー同意があったのか、格付条件が付いたのか、change-of-controlに該当しなかったのかを確認する必要がある。

第六に、現値・スプレッドが不十分である。公開債券サイトではISIN、クーポン、満期などは拾えるが、投資判断に必要なclean price、YTW、Z-spread、G-spread、amount outstanding、dealer run、類似債比較はBloombergやRefinitivが必要である。

9. 公開情報ベースの信用評価

項目 暫定評価 確信度 追加で欲しい資料
事業モデル PLN向け長期PPAを持つ契約型石炭IPP Paitonの最新年次・サステナ資料
収入見通し take-or-pay型PPAにより強い PPA遵守状況、availability実績
オフテイカー PLN集中。国営・政策重要性は強いがソブリン保証ではない 中-高 PLN最新格付レポート、支払履歴
運転リスク 管理可能だが、設備故障・heat rate・経年化は重要 月次・四半期運転レポート
燃料リスク コストパススルーは強み。ただし品質・供給・熱効率問題は残る 石炭供給契約、coal switch実績
債務構造 償還型、担保、DSRA、ウォーターフォールは強み 構造は高、現状は中 compliance certificate、口座残高
担保・回収 担保はあるが除外資産とインドネシア法上の不確実性あり 法務レビュー、trustee report
株主構成 2024年以降変化が大きく継続確認が必要 同意文書、最新格付コメント
市場評価 公開情報だけでは相対価値判断不可 Bloomberg / Refinitiv / dealer runs

10. 2030年債と2037年債の見方

2030年債は、既に元本償還が始まっているため、より短いデュレーションでPaitonのPPAキャッシュフローに投資する債券である。デレバレッジが進む一方、2029年までの円連動capacity paymentミスマッチの影響を相対的に受けやすい。ただし最終償還が近いため、石炭火力の長期移行リスクや2040年代の政策変化へのエクスポージャーは限定的である。

2037年債は、より長くPaitonの契約キャッシュフローに乗る債券である。PPAは2042年まであるため契約期間上は償還をカバーするが、2032年まで元本償還が始まらないため、PLN、発電所経年化、石炭政策、ESG、株主変更、長期設備保守へのエクスポージャーが大きい。2037年債を買うには、2030年債に対して十分なスプレッド・プレミアムが必要である。

現時点では価格とamount outstandingがないため、どちらが相対的に魅力的かは判断できない。ただし、信用リスクの性質としては、2030年債は「より短い償還型プロジェクト債」、2037年債は「長期PPA付き石炭IPPへの長いエクスポージャー」と分けて見るべきである。

11. 次に確認すべき事項

最優先は市場データである。BloombergまたはRefinitivで、2030年債・2037年債のclean price、accrued、YTW、WAL、Z-spread、G-spread、amount outstanding、144A/Reg S別の流動性を確認する必要がある。

次に、noteholder report、compliance certificate、DSCR計算、DSRA残高、major maintenance reserve残高を取得したい。これらが取れれば、Fitchの見方を自分で検算し、PPAキャッシュフローと債務償還の余裕をより精密に評価できる。

第三に、SGX開示を発行体名、ISIN、security codeで網羅検索し、2017年以降の全ての償還通知、事故通知、同意・waiver・amendment、財務報告の有無を確認するべきである。

第四に、2024年Mitsui退出と2026年RATCH持分縮小について、債券書類上のchange-of-control、レンダー同意、格付条件、スポンサー要件への影響を確認する必要がある。

第五に、Paiton Energyの最新サステナビリティ資料やCSR資料を取得し、現在の設備状況、株主構成、環境対応、運転実績、事故・保守情報を補完するべきである。

12. まとめ

Minejesa Capital債は、公開情報だけでも、構造・事業・主要リスクの把握はかなり可能である。SGXのOCは十分に詳細であり、Fitchの2025年更新も現状把握に使える。プロジェクトはPLN向け長期PPA、2,045MWの大型石炭火力、償還型債務、口座ウォーターフォール、DSRAを備えるため、低位投資適格のプロジェクト債としての骨格は確認できる。

ただし、投資判断で最も重要な現在値、すなわち現在残高、DSCR、DSRA、保守準備金、分配可否、同意・waiver履歴、最新財務は公開情報だけでは不足する。したがって、公開情報ベースの結論は「信用分析の入口としては十分だが、ポジション判断にはnoteholder資料と市場価格が必要」というものになる。

2030年債は短めの償還型エクスポージャー、2037年債は長期PPA付き石炭IPPへの長いエクスポージャーであり、同じMinejesa/Paiton信用であっても、要求スプレッドとリスク許容度は分けて考えるべきである。

13. Sources

  1. SGX, Minejesa Capital B.V. listing prospectus page, "US$1,200,000,000 4.625% Guaranteed Secured Senior Notes Due 2030 / US$800,000,000 5.625% Guaranteed Secured Senior Notes Due 2037 Unconditionally And Irrevocably Guaranteed By PT Paiton Energy", 3 Aug 2017.
    https://links.sgx.com/1.0.0/prospectus-circulars/29986

  2. SGX, Minejesa Capital B.V. final offering memorandum, 3 Aug 2017.
    https://links.sgx.com/FileOpen/Valentino%20-%20Final%20Offering%20Memorandum%20for%20Investors.ashx?App=Prospectus&FileID=32555

  3. Petromindo republication of Fitch Ratings, "Fitch Affirms Minejesa Capital BV's (Paiton Energy) Notes at 'BBB-'; Outlook Stable", 3 Nov 2025.
    https://www.petromindo.com/news/article/fitch-affirms-minejesa-capital-bv-s-paiton-energy-notes-at-bbb-outlook-stable-4

  4. SGX, Minejesa Capital B.V., "Notice of Repayment of Amortisation of Principal", 12 Feb 2024.
    https://links.sgx.com/1.0.0/corporate-announcements/PQ1KDUYY7GCYZFCE/786527_General%20announcement%2012%20February%202024.pdf

  5. Mitsui & Co., Ltd., "Completion of the sale of shares in PT Paiton Energy", 1 May 2024.
    https://www.mitsui.com/jp/en/release/2024/1249093_14372.html

  6. RATCH Group PCL, "RATCH completed Indonesia-base Paiton Power Plant's investment valued by USD590.67 Million", 2 May 2024.
    https://www.ratch.co.th/en/updates/company-news/1181/ratch-completed-indonesia-base-paiton-power-plants-investment-valued-by-usd59067-million

  7. RATCH Group PCL, 2026 SET announcements page, including "Reduction of investment proportion in Paiton Energy Thermal Power Plant business in the Republic of Indonesia", 24 Feb 2026.
    https://www.ratch.co.th/en/investor-relations/newsroom/set-announcements?page=1&year=2026

  8. Milbank LLP, "Milbank Advises Medco Power on Culmination of Multi-Year Consolidation as Largest Shareholder in Indonesia's Largest Independent Power Producer", 10 Apr 2026.
    https://www.milbank.com/en/news/milbank-advises-medco-power-on-culmination-of-multi-year-consolidation-as-largest-shareholder-in-indonesias-largest-independent-power-producer.html

  9. Asian Power, "RATCH cuts Paiton Energy stake in $85.1m sale", 2026.
    https://asian-power.com/news/ratch-cuts-paiton-energy-stake-in-851m-sale

  10. Nebras Power, "Nebras Power Reached Successful Financial Close in Respect of a ... Debt Financing Through its Affiliate Minejesa Capital", 29 Aug 2017.
    https://nebras-power.com/media/news/2017/08/nebras-power-debt-agreement

14. 未確認事項